電磁アクチュエータ技術コラム:基礎から最新トレンドまで
Column
超音波酸素センサとは?—非接触でメンテナンスフリーな酸素濃度測定技術
1.はじめに
「メンテナンスが面倒」「時間もコストもかかってしまう...」
医療や産業の現場では、酸素濃度を測定する際に、センサの定期的な交換や校正、測定値のずれ(ドリフト)といった課題が、多くの担当者を悩ませています。
もし、こうした手間や不満から解放され、長期間安定して正確な測定を続けられるとしたら、どうでしょうか?近年、その解決策として注目されているのが、超音波を利用した物理式の酸素センサです。
本コラムでは、なぜ超音波式が従来方式の課題を克服できるのか、その原理から具体的なメリットまでを分かりやすく解説します。
2.酸素センサに「超音波」が使われる理由
酸素濃度を測定するセンサといえば、ジルコニア式やガルバニ電池式などの化学的手法が主流でした。しかし、こうした方式には定期的な交換やドリフト 、応答遅れなどの課題がつきまといます。
そこで近年注目されているのが、超音波を使った酸素濃度測定技術です!
この方式は、化学反応に頼らず、ガスの音速差を利用して酸素濃度を求める物理的な測定手法であり、非接触・長寿命・高速応答といった特徴を持っています。

3.超音波酸素センサの原理とは?
超音波酸素センサでは、音波の伝搬速度が気体の組成によって変化するという物理特性を利用しています。
具体的には、センサ内部に送信部と受信部を向かい合わせた形で配置します。送信部から測定対象の気体に超音波を送信し、一定の距離を超音波が伝わるのにかかる時間(伝搬時間)を測定します。その音速を解析することで、酸素濃度を算出する仕組みです。
例えば、空気中の音速はおよそ343m/s(20℃時)ですが、酸素の割合が高くなるほど分子量が変化し、それに伴って音速も変化します。この微小な変化を高精度に捉えることで、非接触・リアルタイムで酸素濃度を測ることが可能になります。

超音波酸素センサの原理
4.ジルコニア式・ガルバニ電池式との比較
センサ方式 | 特長 | 課題 |
---|---|---|
超音波式 | 非接触、長寿命、高速応答、流量を同時計測可能 | 初期費用はやや高め |
ジルコニア式 | 高温下でも使用可能、反応性が高い | 高温下でも使用可能、反応性が高い ゼロ点校正作業必須、暖機時間必須、高価 |
ガルバニ電池式 | 小型、安価 | 定期交換必須、寿命が短い |
このように、超音波式は化学反応を使わないため、長寿命・低メンテナンス・リアルタイム計測を実現し、従来方式の課題を解消します。医療・食品・産業ガス分野など、頻繁な交換が難しい場面にも有効です。
5.超音波酸素センサの特徴
①高速応答・リアルタイム測定
物理的な測定方式のため、遅延がほとんどなくリアルタイムで濃度を出力できます。突発的な変化の検知にも優れています。
②非接触・非消耗型
気体とセンサが直接接触しない構造のため、腐食や劣化の心配が少なく、長寿命です。基本的な消耗部品の交換も不要です。
③複数ガス混合下でも精度維持
音速差に基づく解析を行うため、二酸化炭素や窒素など他のガスとの混合下でも酸素濃度の変動を高精度に抽出可能です。
6.超音波酸素センサの主な用途例
- 医療現場での酸素投与モニタリング
- 産業用ガス混合装置における酸素濃度管理
- 密閉空間(倉庫・貯蔵室など)での安全監視
- 発酵工程における酸素供給制御
超音波酸素センサは、これまで酸素センサのメンテナンスに悩まされていた現場において、大きな技術的メリットを提供します。
7.まとめ
超音波酸素センサは、物理的かつ非接触で酸素濃度を測定する新しい技術です。化学反応を使わないため、ドリフトが少なく、長寿命で、信頼性の高いセンシングが可能です。
酸素濃度のリアルタイム監視や長期間の運用が求められる場面で、このセンサは新たな選択肢となるでしょう。本コラムをきっかけに、超音波の酸素濃度測定の可能性を知っていただけたら幸いです。
8.お問い合わせ・関連情報のご案内
タカノ株式会社では、
- 超音波式酸素センサ(濃度測定)
- 超音波流量コントローラー(1台で濃度計測/流量制御が可能)
など、超音波式製品を取り揃えております。
センサ単体での販売も行っておりますので、ご検討中の方は、下記リンク先より詳細をご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。