電磁アクチュエータ技術コラム:基礎から最新トレンドまで
Column
【コンプレッサー依存からの脱却】 ロータリーソレノイドで実現する自動装置の省エネ化
1. はじめに
近年、物流業界や農業・製造現場では、労働力不足への対応や出荷量の増加を背景に、自動仕分け装置や搬送システムの導入が急速に進んでいます。
同時に、各企業が掲げるカーボンニュートラルやCO2削減の取り組みにおいて、設備の消費電力削減は重要な課題となっています。
工場設備における電力消費のうち、20〜30%はエアーコンプレッサーが占めるといわれており、コンプレッサーの稼働率低減は省エネルギーの有効な手段の一つです。こうした背景から、装置に用いられるアクチュエーターを、空圧方式(エアシリンダ)から電動方式へと置き換える動きが注目されています。
2. 装置に潜む圧縮空気のロス
自動装置では、多数のエアシリンダが使用されています。しかし、圧縮空気を動力源とするシステムには、以下のような構造的なロスが存在します。
- コンプレッサーでの圧縮損失・発熱ロス
- 配管・継手からのエアリーク(空気漏れ)
- 圧力制御による余剰供給
- 動作後の排気時に失われるエネルギー
結果として、コンプレッサーに投入された電力のうち、実際にシリンダを動かすために使われるエネルギーは10%未満ともいわれています。この非効率性は、製造現場におけるカーボンニュートラル推進の大きな障害となっています。
3. 空圧から電動へ ― 仕分け機構の新しい駆動方式
この課題を解決する手段として、電動アクチュエーターへの転換が注目されています。
特に、スライドシューターやレーン切替機構、ストッパー、ゲート動作など、短ストロークかつ高い応答性が求められる用途では、「ロータリーソレノイド」が有力な選択肢となります。
バイスロータリーソレノイドは、動作時以外は永久磁石の磁力で自己保持が可能であるため、待機電力ゼロの超省電力アクチュエーターです。
4. ロータリーソレノイド(電動)vsエアシリンダ(空圧)
| 項目 | ロータリーソレノイド(電動)![]() |
エアシリンダ(空圧)![]() |
|---|---|---|
| 図:ロータリーソレノイドによる高速・高頻度な不良品リジェクト機構のイメージ | ||
| 高速応答性 | ◎ ミリ秒単位で動作可能。高頻度仕分けに最適 |
△ 空気の圧縮・流路の影響で応答遅れあり |
| コンパクト性 | ◎ シンプル構造で小型化しやすい |
△ バルブ・配管含めると大型化しやすい |
| 発生力 (トルク/推力) |
△ 中程度(サイズ依存) 短ストローク・小~中トルク用途に適する |
◎ 高出力が容易 大推力・長ストロークに適する |
| 省エネルギー | ◎ 動作時のみ通電、待機電力ゼロ |
× コンプレッサー常時稼働でエネルギー消費大 |
| 設備全体の消費電力 | ◎ 低い(個別駆動) |
× 高い(コンプレッサー負荷が支配的) |
| メンテナンス性 | ◎ 基本メンテナンスフリー (ベアリング機種は1億回超の耐久実績) |
△ エア漏れ点検、フィルタ交換、 コンプレッサー保守が必要 |
| クリーン性・静音性 | ◎ 排気なし・低騒音でクリーン環境に適合 |
△ 排気音・エアブロー音あり、パーティクル拡散の懸念 |
| 低温環境適性 | ◎ 冷蔵・冷凍環境でも安定動作 |
△ 結露・凍結の影響を受けやすい |
| 配線・配管 | ◎ 電源配線のみで完結 |
× エア配管・バルブ・レギュレータが必要 |
| 初期導入コスト | △ 単体コストはやや高め |
◎ 機器単体は安価 |
| ランニングコスト | ◎ 低い(電力のみ) |
× 高い(電力+コンプレッサー維持費) |
5. 活用事例
物流や製造ラインにおいて、エアシリンダを使用していた仕分け・分岐機構を「バイスロータリーソレノイド」に置き換えることで、コンプレッサーの消費電力を劇的に削減できます。さらに、各業界の自動化装置において、以下のような具体的なメリットをもたらします。
物流の仕分け(スライドシューの走路角度切替)
高速コンベア上の荷物を振り分ける「スライドシューソーター」では、瞬時に、正確に、連続的な動作が求められます。ロータリーソレノイドの持つ瞬時の回転動作と高い繰り返し精度はシューター駆動に最適であり、エア配管不要による設備の省スペース化にも貢献します。
自動選別・排出(コンベアの搬送路切替)
製品の品質やサイズを高速判別する「自動選別機」や、NG品を弾き出す「不良排出機」に採用されています。長時間の連続運転に耐える高耐久性を持ち、エア漏れ点検などの保守メンテナンスの手間を大幅に削減します。
自動搬送システムの走路振分け(走行レーン分岐誘導)
工場や倉庫内で活躍する「オーバーヘッドソーター」「リニア天井搬送システム」「モノレール式搬送システム(OHT)」などの走行レーン切り替え用途で活躍します。空圧設備(コンプレッサーやバルブ)が不要になるため、搬送システム全体の軽量化と設計自由度の向上を実現します。
紙類の仕分け(フラップ切り替え機構)
「ATM(釣銭機)」「郵便区分機」「伝票仕分け機(リーダーソーター)」など、多様な厚みの紙類を高速で仕分ける機器にも最適です。空圧特有の応答遅れがないため、限られた機器内のスペースでもミリ秒単位の応答速度で確実な搬送路の切り替えが可能です。
このように、ロータリーソレノイドへの置き換えは、コンプレッサーにかかる電力の削減だけでなく、設備の「高速・高精度化」「省スペース化」「保全工数の削減」に直結し、次世代のスマートなシステム構築を強力にサポートします。
特設ページでは、上記でご紹介した機構の具体的な動作イメージ(図解)や、用途ごとの推奨ソレノイド製品をご紹介しています。
ご自身の設計要件に近い事例をぜひご覧ください。
6. まとめ
製造・物流現場ではカーボンニュートラルに向けた電動化が進んでおり、自動仕分け装置も「空気を使わない」スマートな駆動へと進化しています。その鍵となるロータリーソレノイドは、空圧に匹敵する応答速度と電動の優れた制御性、高い省エネ性を兼ね備えたアクチュエーターです。これを導入することで、エネルギーロスを抑えつつ、高効率で信頼性の高い次世代の仕分けシステムを実現できます。



