電磁アクチュエータ技術コラム:基礎から最新トレンドまで
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ラッチングソレノイド徹底解説!永久磁石(レアアース不使用)で実現する省電力&高信頼ロック機構
1.はじめに
このコラムでは、ラッチングソレノイドの基本的な仕組み・特長・構造・用途を解説し、ご使用いただく際に必要な外部抵抗ついてもご紹介します。ぜひご一読ください。
2.ラッチングソレノイドとは?
①仕組みと特長
ラッチングソレノイドは、直流電源によってシャフトを吸引する直進型ソレノイドの一種です。最大の特徴は、コイルへの通電を解除した後も、内部に組み込まれた永久磁石の磁力によってシャフトがその位置を保持し続ける自己保持特性を持つ点です。これにより、位置保持のために常時電流を流し続ける必要がなく、大幅な省電力化を実現します。
※本製品の永久磁石には、レアアースは含まれておりません。
②構造
一般的な構造としては、コイルとシャフト、そして永久磁石で構成されています。
コイルに通電すると発生する磁場によって、シャフトが吸引され所定の位置に移動します。通電停止後も永久磁石の磁力によってその位置を維持し、逆方向に通電することで保持が解除され、次の動作が可能になります。
- 動作前:永久磁石の磁界により図Aの位置で保持します。
- 通電時:図Bのようにコイルの磁界が発生し、シャフトが右から左に動作します。
- 動作後:永久磁石の磁界により、図Cの位置で保持します。

【ラッチングソレノイド 構造図】
③ソレノイドとの比較
| ソレノイド | ラッチングソレノイド | |
|---|---|---|
| 動画 | ||
| 通電波形 | ![]() |
![]() |
| 保持 | 保持するためには連続通電が必要 | 永久磁石により、無通電状態でも位置を保持 |
| 電力消費 | 消費電力が大きく、発熱も伴う | 省電力かつ低発熱 |
3.なぜ外部抵抗が必要なのか?
①外部抵抗が必要な理由
ラッチングソレノイドは、永久磁石によってシャフト位置を保持しています。この保持状態を解除して次の動作に移るためには、永久磁石の磁力を打ち消す「消磁電流」を逆方向に流す必要があります。
この消磁電流を生み出すために外部抵抗は重要な役割を果たします。
下図の通り電流を流すと、吸引コイルを電流が通過した後に、消磁コイルと外部抵抗に回路が分岐し、並列回路となります。そのため、外部抵抗値よってコイルの消磁電流の大きさを可変することが可能です。
カタログに記載されている外部抵抗は、永久磁石の保持力と消磁コイルの力がちょうど打ち消し合う数値に設計されています。
外部抵抗を入れない状態でも動作可能なソレノイドもありますが、本来の吸引力を満たせない可能性があるため注意が必要です。外部抵抗を入れられない場合はご相談ください。
②駆動回路・動作について

【下→上に動作するとき】

【上→下に動作するとき】
4.用途例
ラッチングソレノイドの「無通電自己保持」は、施錠状態を長時間維持する必要がある場合や、停電時でも位置を保持し続けるため、電源遮断時でも安全性確保が求められるロック機構に最適です。
電気錠の開閉駆動
- 医療・分析機器:誤動作防止や安全性の向上に寄与します。
- ロッカー:消費電力の削減と停電時のセキュリティ確保に優れています。
5.まとめ
今回は、ラッチングソレノイドの仕組み・特長・構造・用途を解説し、ご使用いただくにあたり必要な外部抵抗についてもご紹介しました。システムの安全性向上や省エネルギー化に最適な製品です。
また、タカノ株式会社では、
- 防水仕様
- ラバーやエアダンパーを用いた消音仕様
- 40N以上の高吸引力仕様
ご質問や詳細情報のご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。



